「通院回数が少ないと慰謝料が減る?」その真実とは|一般社団法人 交通事故サポート協会
交通事故に遭われた方から最も多く寄せられる相談の一つが、「通院回数が少ないと慰謝料が減ってしまうのか」という疑問です。本記事では、一般社団法人 交通事故サポート協会として、中立的・公的・教育的な立場から、この問題を専門的に解説します。
目次
- 通院回数と慰謝料の基本的な関係
- 慰謝料算定基準の違い(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)
- 通院回数が少ないケースで何が起きるのか
- 協会に寄せられた一般化した事例
- 「制度の理解」を深めるための協会の見解・提言
- 適切な通院と書類管理の重要性
- 交通事故被害者支援のための相談窓口
- 参考リンク
通院回数と慰謝料の基本的な関係

慰謝料(精神的苦痛に対する補償)は、交通事故後の通院状況と密接に関連しています。特に以下の2点が重要です。
① 通院日数
自賠責基準では、実際に通院した日数や治療期間(事故日から治療終了日までの日数)をもとに慰謝料の算定を行います。
② 通院頻度
通院回数そのものではなく、「治療の必要性が医学的に認められるか」が重要です。頻度が極端に少ないと、保険会社から「治療の必要性が低い」と判断される可能性があります。
通院回数が「多い・少ない」だけでなく、症状や治療経過の一貫性が重視されます。
慰謝料算定基準の違い(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)
慰謝料の金額は、どの基準を用いるかによって大きく異なります。協会として、制度の正しい理解を広めるため、それぞれの概要を整理します。
● 自賠責基準
1日あたりの慰謝料は定額(現在は4,300円)。通院日数×2 と治療期間のいずれか少ない方を基準に算出します。
● 任意保険基準
各保険会社が独自に設定しており、自賠責よりやや増額される場合があります。
● 弁護士基準
裁判例にもとづく最も高い水準の基準。弁護士費用特約を利用する場合、この基準で請求できるケースが多くみられます。
同じ通院期間でも基準によって慰謝料が大きく異なるため、制度の理解が必要です。
通院回数が少ないケースで何が起きるのか
通院回数が少ないこと自体が「問題」ではありません。しかし、以下のような影響が出ることがあります。
● 症状の一貫性が認められにくい
間隔が空きすぎると、「痛みが改善している」と推定される可能性があります。
● 事故との因果関係が弱く見られる
治療を継続しないと、症状と事故の関係が希薄だと判断され、後遺障害審査にも影響することがあります。
● 慰謝料算定上の「通院実績」が減る
自賠責基準では通院日数が少なくなり、結果として慰謝料も低くなります。
したがって、単に回数が少ないから減額されるわけではなく、治療の必要性・医学的妥当性・継続性がポイントとなります。
協会に寄せられた一般化した事例
【事例】○○市在住の30代男性・追突事故
事故直後の痛みが軽く「様子を見る」と判断し、最初の2ヶ月間は月に2回のみ通院。しかし3ヶ月目から痛みが増し、整形外科で「むち打ち症状の継続治療が必要」と診断されました。
その後、適切な頻度で治療を継続した結果、慰謝料は治療期間に応じて認められ、症状固定までの治療が妥当であると判断されました。
通院回数が少ない期間があっても、「症状と診断が医学的に裏付けられているか」が最重要であることが確認された事例です。
「制度の理解」を深めるための協会の見解・提言
一般社団法人 交通事故サポート協会として、交通事故被害者の支援と社会全体の啓発を目的に、以下の方針を示します。
【協会の見解】
慰謝料はあくまで医学的・法的根拠に基づき算出されるべきであり、通院回数のみを評価基準とするべきではありません。適切な診断・治療・記録が重要であり、その過程が公正に評価される社会環境が必要です。
【協会の提言】
- 事故直後の軽度の痛みでも、早期受診を徹底すること
- 医師の指示に基づく継続的な治療の重要性を広く啓発すること
- 被害者が正確な制度理解を得られる教育の充実
- 保険会社・医療機関・行政との連携による情報提供の強化
適切な通院と書類管理の重要性
慰謝料の算定や後遺障害等級の認定では、以下の書類が非常に重要です。
- 診断書・経過診断書
- 施術証明書
- 通院記録
- 画像診断(CT/MRIなど)
これらは保険会社や損害保険料率算出機構が判断を行う際の重要資料となり、通院頻度よりも医学的証拠の整合性が重視されます。
交通事故被害者支援のための相談窓口
交通事故対応は非常に専門的であり、一般の方が制度を正しく理解することは容易ではありません。協会では、被害者の方が適切な支援を受けられるよう、中立的な立場から情報提供を行っています。
ご不安がある方は、以下の窓口よりお問い合わせください。
協会公式サイト:https://jiko-support.or.jp/
参考リンク
交通事故に関する制度は複雑であり、個々のケースによって状況は大きく異なります。協会としては、制度の理解を深め、すべての交通事故被害者が正当な支援を受けられる社会づくりに貢献することを使命としています。
最後に:交通事故で困っている方を一人でも多く救いたいという思い
交通事故に遭われた方は、身体の痛みだけでなく、精神的な不安、仕事や家族への影響など、様々な困難を抱えています。当協会は、中立的な立場から制度の正しい情報を届け、必要な支援に繋がる「橋渡し」の役割を果たすことを目指しています。
私たちは、交通事故に苦しむ人を一人でも多く支えたい。 そのために、教育・啓発・制度理解の促進を通じて、社会全体が交通事故に向き合う姿勢を変えていく必要があります。
すべての交通事故被害者が安心できる社会の実現を目指して。

