示談交渉の前に知っておくべき基礎知識
交通事故の被害に遭った際、多くの方が初めて経験するのが「示談交渉」です。
しかし、示談の場では加害者側の保険会社とのやり取りが中心となるため、知識不足のまま進めると不利益を被ることがあります。
本記事では、一般社団法人 交通事故サポート協会が中立的な立場から、示談交渉の前に理解しておくべき基礎知識を解説します。
目次
1. 示談交渉とは何か
「示談」とは、事故の当事者間で損害賠償の内容や金額を話し合い、合意に至ることを指します。
交通事故の場合、加害者本人ではなく、加害者が加入している保険会社が示談の窓口となることが一般的です。
示談交渉は「事故の終結」を意味します。一度合意してしまうと、後から症状が悪化しても原則として再請求は困難になります。
そのため、治療が完全に終了してから示談に入ることが重要です。
示談書の内容
示談書には次のような内容が含まれます。
- 支払金額と内訳(治療費・慰謝料・休業損害など)
- 支払い期日
- 再請求を行わない旨の合意条項
この書面が法的効力を持つため、署名前に内容を十分に確認することが求められます。
2. 示談交渉のタイミングと注意点
示談交渉は、原則として治療が完了した時点で行われます。
しかし、保険会社から「早期に示談を」と促されるケースも少なくありません。
「まだ痛みが残っているが、保険会社から示談書が送られてきた」という相談が多く寄せられています。
このような場合、慌てて署名せず、まずは医師の判断を仰ぐことが大切です。
もし症状が残る場合には、「後遺障害認定」を受けてから示談に進む選択もあります。
示談を急いではいけない理由
- 後遺障害の申請後に慰謝料額が変動する可能性がある
- 示談成立後は原則として再交渉できない
- 保険会社の提示額が必ずしも適正とは限らない
したがって、被害者自身が制度を正しく理解し、「示談=終わり」ではなく「納得できる終結」を目指すことが重要です。
3. 自賠責保険・任意保険の基礎知識
交通事故に関する賠償は、主に以下の2つの保険によってカバーされます。
自賠責保険(強制保険)
全ての車両に加入が義務付けられており、人身事故の最低限の補償を目的としています。
補償上限は120万円(傷害の場合)ですが、通院日数や治療内容によって計算方法が異なります。
任意保険
自賠責保険で補えない損害をカバーするために、任意で加入する保険です。
保険会社が代理で示談交渉を行う場合も多く、被害者にとっては相手方の任意保険会社とのやり取りが中心となります。
弁護士特約の活用
被害者が自身の加入保険に「弁護士費用特約」を付けている場合、自己負担なしで弁護士に相談・依頼できることがあります。
示談金の増額や精神的負担の軽減にもつながるため、利用を検討すべき制度です。
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4. 実際の事例から学ぶ示談の流れ
ここでは、実際に寄せられた相談をもとに一般化した事例を紹介します。
【事例】○○市在住の30代男性の場合
追突事故により頚椎捻挫(むち打ち)と診断され、整骨院と整形外科を併用して3ヶ月間通院。
保険会社から提示された示談金は約20万円でしたが、協会が制度的観点から助言を行い、適正な慰謝料計算方式をもとに再確認した結果、最終的には約38万円で示談が成立しました。
このように、被害者が制度を理解することで、結果的に「納得できる示談」につながるケースは少なくありません。
5. 協会の見解と提言
一般社団法人 交通事故サポート協会は、示談交渉に関する社会的課題を以下のように考えています。
(1)制度理解の不足が被害者の不利益を招いている
多くの被害者が、保険会社の提示額や手続きの流れを十分に理解しないまま署名してしまう現状があります。
協会としては、行政・医療機関・専門家が連携し、「制度の見える化」を進めることが急務だと考えます。
(2)被害者支援体制の地域格差
大都市圏に比べ、地方では交通事故被害者の相談先が限られています。
今後はオンライン支援や地域ネットワークを活用し、全国どこでも公平な支援が受けられる体制の構築を目指します。
(3)社会全体の啓発活動の重要性
示談や後遺障害などの知識は、事故に遭ってから学ぶのでは遅い場合があります。
学校教育や企業研修などを通じて、交通事故に関する法制度教育を社会全体で推進していくことが望まれます。
6. 参考リンク
一般社団法人 交通事故サポート協会は、
被害者一人ひとりが制度を正しく理解し、安心して回復と再出発に向かえる社会の構築を目指しています。
すべての交通事故被害者が安心できる社会の実現を目指して。

