自賠責保険の仕組みを正しく理解しよう|一般社団法人 交通事故サポート協会
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、日本で自動車を運転するすべての人が加入しなければならない、いわば「被害者保護を目的とした最低限の社会制度」です。本記事では、一般読者の方だけでなく、行政関係者、専門家、交通事故支援に携わる機関・団体の皆さまにも役立つよう、制度の基礎から実際の支払基準、よくある誤解、そして制度を正しく活かすための提言まで、幅広く解説していきます。
本記事は、中立的かつ教育的な立場を守り、社会全体における交通事故被害者の支援と制度の理解を促進することを目的としています。
目次
- 自賠責保険とは?制度の目的と社会的役割
- 自賠責保険で補償される範囲
- 支払基準の仕組みを理解する
- 協会の取り組みと支援事例(匿名)
- よくある誤解と正しい知識
- 協会としての見解・提言
- 相談窓口のご案内
- 参考リンク
自賠責保険とは?制度の目的と社会的役割
自賠責保険とは、交通事故の被害者が最低限の補償を受けられるように設けられた、国が定める強制保険制度です。
この制度の最も重要なポイントは、加害者側の事情に関わらず、被害者が迅速かつ公平に救済される仕組みであるという点です。自賠責保険は、民事責任の追及とは別に、被害者の治療継続や生活再建の「最低限の安全網」として機能します。
一般社団法人 交通事故サポート協会は、公式サイトにおいて制度理解の普及を重視しています: https://jiko-support.or.jp/
自賠責保険で補償される範囲
自賠責保険は「人身損害」に限定されており、物損(車・建物・自転車など)は対象外です。補償の代表例は以下の通りです。
治療費(支払限度額120万円)
診察・投薬・手術・入院・通院費に加えて、必要な交通費なども対象になります。
休業補償
働けなかった期間に応じて、原則として1日あたり6,100円が支給されます。(証明により増額可能)
慰謝料
通院の場合、1日あたり4,300円が基準となり、実通院日数と治療期間に応じて計算されます。
後遺障害慰謝料・逸失利益
後遺障害等級に応じて、75万円〜3,000万円の慰謝料が支給されます。
制度の「最低限」ではありますが、被害者を支える非常に重要な役割を果たしています。
支払基準の仕組みを理解する
支払基準は国土交通省・金融庁が定め、全国共通で運用されています。 また、自賠責保険は「加害者側の保険会社が支払う」のではなく、あくまで「自賠責保険そのものの枠組み」で支払われる点も重要です。
なぜ全国統一の基準が必要なのか?
交通事故の被害者救済においてもっとも重要なのは、地域差や契約条件による不公平をなくすことです。 そのため、自賠責保険は全国一律の基準で運用されています。
被害者請求と加害者請求の違い
多くの方が誤解しやすいポイントですが、自賠責保険は被害者自身が直接請求できる「被害者請求制度」があります。
被害者請求とは、加害者側の保険会社の対応を待たず、被害者が必要書類を揃え直接請求できる仕組みです。
これは、被害者救済をより迅速に行うための重要な制度であり、協会としても積極的な制度理解の促進を提言しています。
協会の取り組みと支援事例(匿名)
【事例①】○○市在住・30代男性
自転車との接触事故で通院が長期化し、保険会社とのやり取りに不安を感じ、当協会へ相談がありました。 協会では制度の説明、必要書類の整理、被害者請求の方法を丁寧に案内し、結果として必要な治療を継続することができました。
【事例②】△△県在住・40代女性
相手の保険会社から「通院はそろそろ終了してほしい」と伝えられ不安に。 協会では、治療の必要性を医師と確認しつつ、自賠責保険に基づく正当な権利を説明。 その後、適切な期間の治療を受けることができました。
協会としては、被害者が制度の誤解によって不利益を受けることのないよう、教育的支援を一貫して行っています。
よくある誤解と正しい知識
「通院日数が少ないと慰謝料が減る?」
正確には、「実通院日数 × 2」と「治療期間」のどちらを基準とするかで計算されます。 医療上必要な通院であれば、日数だけで不利になることはありません。
「整骨院では自賠責を使えない?」
医師の判断があれば整骨院での施術も対象となります。 ただし医学的な管理が必要なため、医療機関との連携は必須です。
「加害者が無保険だと補償されない?」
自賠責保険は車両に付帯しているため、原則として補償は受けられます。
協会としての見解・提言
一般社団法人 交通事故サポート協会は、制度を正しく理解し、適切に活用することが被害者救済につながると考えています。
【協会の方針】
- 制度に関する正確な情報提供の徹底
- 医療機関・行政機関との連携強化
- 被害者が不利益を受けないための教育支援
- 地域社会における制度理解の啓発活動
とくに制度の誤解によって、必要な治療を途中でやめてしまうケースが後を絶ちません。 協会としては、「制度の理解」「社会全体の啓発」を強化し、すべての交通事故被害者が適切な支援を受けられる社会を目指しています。
相談窓口のご案内
自賠責保険の仕組みは複雑であり、個々のケースによって判断が大きく異なります。 不安な点がある場合は、お気軽に専門の相談窓口をご利用ください。
▶ 交通事故サポート協会|相談窓口 https://tasa.or.jp/contact/
制度の誤解や情報不足により、被害者が適切な支援を受けられない状況は、社会全体の課題です。 協会はすべての方に安心していただけるよう、専門的かつ中立的な立場からサポートを続けていきます。
参考リンク
すべての交通事故被害者が安心できる社会の実現を目指して
交通事故は、誰にとっても突然訪れる大きな負担です。 その負担を少しでも軽減するために、自賠責保険をはじめとした制度は存在しています。
しかし、制度を正しく理解できず、十分に活用できないまま不利益を受けてしまう方が多いのも事実です。 一般社団法人 交通事故サポート協会は、そのような状況をなくすため、制度理解の普及、社会全体への啓発、被害者支援を継続してまいります。
そして何よりも—— 「交通事故で困っている方を、一人でも多く救いたい」 この思いこそが、協会の活動の原点です。
これからも、すべての交通事故被害者が安心して生活を再建できる社会を目指し、公的・中立的な立場で取り組みを続けてまいります。

